佐藤:まず、構造計算をしているという意欲は非常に良いと思います。ただし、曲げの計算をしたということですが、応力集中は考慮していますか?

米澤:ガラスとロットの接合部にかかる応力の集中に関してですか。

佐藤:突き出た「束」というか。

米澤:はい。

佐藤:ガラスにつけた束の根元を折るように、曲げが発生するわけですよね?そこにものすごい応力が集中しますが、有効幅のチェックはしていますか?

米澤:こちらに構造の計算式を示しています。

佐藤:この式はなんとなく概念的に書いてありますが、具体的な計算として、例えば、曲げのチェックをしたのであれば、断面係数がどこかに表れているはずですよね?

米澤:はい。

佐藤:それはどこに表れているんですか?

米澤:今回は1/2モデルを成立させるうえで、構造の考えとして理論式により構造計算いたしました。ですので、今の段階では踏み込めきれていない箇所は多々ありまして、今後そういうところも含めて検討していけたらと考えています。

佐藤:原理的には可能性が高いので。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、セシルが以前の展覧会で、C型のプレートをワイヤーでつなぎ、ワイヤーをぴんと張るおかげで、プレートが接触せずに自立するという展示を行いました。今回の案は、それに比較的似ているので、原理的には可能だと思います。ただ計算のチェックはすぐにはできないのですが、ガラスって相当重いんですよね。この模型が1/2スケールで、本来ガラスを使用する部分を、アクリルで制作している?

米澤:はい。

佐藤:この1/2スケールのアクリルの模型で、きちんと立たずにふにゃっとしてしまっている状況だと、実物大にすると相対的に柔らかいものになるので、ちょっと実物大が危ういなと。アクリルという軽い模型の段階で、しかも1/2だと、もっとピシっと立っているぐらいの証明をして見せないと、やや説得力が弱いですね。

米澤:それに関してはおっしゃる通りなのですが。この短期間での時間的配分を考えますと…いろいろスタディをしてみましたが、モデルとはいえギリギリで成立させようと考え過ぎて、部材をだいぶ細くし過ぎてしまいました。本当の事を言ってしまいますと、ナットをきつく締めすぎると、ワイヤーがぶちっと切れてしまうこともあったり、かと思うとネジ自体が折れてしまったりするので、その辺りの計画がちょっと甘かったかなと反省しております。あくまで理論をベースにしてやっていた感じはありまして、実際のところはモデルを作って試してみようと思って、いろいろやってみたのですが、接合部の製作上の問題もあり、ご覧の通り、緩んでいるところがだいぶでてきてしまいました。

佐藤:手短に答えてください(笑)。

米澤:はい。すいません。そこが…

佐藤:わかりました。その部分は今後のブラッシュアップに期待するということで審査をします。では次の質問ですが、屋根までこのシステムでいくということは考えなかったのですか?

米澤:全部ガラスということですか?

佐藤:はい。

米澤:最初は、全部ガラスだけで成立できないかなとも考えたのですが、ガラスだけでやってしまうよりも、屋根は木であるとか、少し重量を感じる素材にして、ガラスがそれを支えているという状況の方が、逆にガラスの透明性や軽やかさが表現できるのではないかと考えて、このような形にさせていただきました。

佐藤:わかりました。

平沼:3人の方それぞれに共通する話しですが、もともとこの競技で提案を求めたものは、一般の建築で通用するものを目的としていて、あくまでも新しいガラス建築の提案です。そして、その部分のモックアップをこの場所で展示をする。でも予定している展覧会会場で、競技の公開審査会をやっていますので、みなさんの説明をお聞きしていると、どうしても実際の建築にガラスを使用するということよりも、展示することを意識しがちなのかな、と思ってしまいます。米澤さん、今提案をされている規模や屋内ではなくて、外部で拡大化したときの使用方法を考えて設計されていますか?

米澤:今回、ガラスのパビリオンという形式で提案しましたので、展示あるいは体験用として考えています。例えば住宅ですとか、そのような大きなものに使用するところまで、今のところ、あまり厳密にイメージができているわけではありません。でも、住宅などのすごく厳しい状況ではなく、ガラスのパビリオンという制約の弱い状態で一度成立させることによって、そこから応用出来るという可能性は信じています。

平沼:はい。ありがとうございました。

花澤:なかなか味わえないかもしれないですが、ちょっとお金の話も気になるのですが。

米澤:はい。

花澤:ガラスの加工からすると、丸切りというのはコストのかかる加工をしているんです。

米澤:はい。

花澤:これで普通よりも大体金額は3割アップです。さらに最高の磨きの面取りをしなくてはいけないですよね?それからエッジからどれくらいかわかりませんが、穴あけもしなくてはいけない。穴あけ加工って結構高いですよ。エッジから距離がありますが、割れないかどうかの計算をしなくてはいけません。このガラスを何枚使う予定ですか?

米澤:500枚です。

花澤:500枚。大体どのくらいで出来上がるか、計算されました?

米澤:お金ですか?

花澤:ええ、お金。

米澤:いや…なんとなく高いんだろうなと。今回はアクリルで模型を制作しましたが、アクリルであっても、おっしゃる通り丸加工ですとか、穴あけを外注するとお金がかかるので、今回は出来る限り自力で頑張りました。はい。

花澤:アクリル場合、1kg当たり100?150円ぐらいするので、ガラスの場合は素材レベルで6?70円ぐらいでしょう。たぶん、加工代は全然違うでしょうね。仮に米澤さんの案が最優秀賞を受賞した場合、随分コストがかかるんじゃないかなと心配しています。一度計算してみて下さい。

米澤:はい。

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