司会:それでは審査員の皆様、ご質疑をお願いします。

佐藤:まず、構造のことをよく考えているなと思いました。下に張られた板金で作ったワイヤー上のものや、梁が横座屈して上辺が曲がるところなどよく考えられていると思います。ですが、まだまだ難問は山積みで、そう簡単にできないなと思います。例えば、揚力に対して屋根はどうか、5 mmのガラスで果たして強度は大丈夫か。もしくは板金でワイヤー状に張ってあるものが錆びて切れると、すべてが落下してしまうので注意しなくてはいけないなど様々ですね。それぞれ解決していかなくてはいけないと思いますが、その辺りは何かビジョンというか、設計を進めるにあたって心構えなど、どのように考えていますか。

増田:確かにおっしゃる通りだと思います。できたものからどのように安全に外し解体していけるのかということを考えた結果、今の仕組みに至っていて、外部に置くとなると問題は山積みなので…

佐藤:心構えというか、時間でいいです。設計の時間であるとか、業務的なところです。今回は実施コンペなので、安全性ももちろん確保しなくてはならず、相当な注意を払って実施設計を行わなければならない。かなり限られた時間だと思いますが、予算的には非常に可能性がありそうですが、設計がまとまるかどうかですね。ビジョンは大丈夫ですか。

増田:時間的なことであれば、やればいい、と思うので…

佐藤:なかなか答えづらいと思いますけれども、その辺は注意して欲しいと思います。あとは、光が反射する、透過するのをうまくコントロールするためにガラスを4枚で構成するということですが、プランは四角形にしなくても言い訳なので、本当に4枚がいいのか。枚数を増やすことも検討できるのではないかとも思います。また反射する光のおかげで、何かプランに良い影響を与えることがあるといいと思うのですが、そういうアイデアは何かないですか。

大坪:そうですね。通常であったらクライアントがどのように使いたいかなどと要求があったうえで、じゃあどういう分割がいいだとか、こういうふうにこう影響を与えることがいいというように、そこで初めて決まってくるのかなと思っていますが…

太田:あの、それと同じ質問だと思うのですが、最初の出発点は椅子が2つあって、逆の方向に椅子の影ができる、という案だと思うのですが、パースを見ると、壁にいろいろ映りこむという話になっている。例えば実際真ん中に人間が立っていた時に、どのような影が落ちるのかというような点が、ちょっと分からないのですが、実際にここに人が立ったり、椅子を置いたりしたときにどのような影ができるのでしょうか?

増田:たぶんそれが先程の最後の言葉か、もしくはタイトルに近いのかもしれないのですが、複数の弱い影と、強い影が室内の照明のように、すごく身近な太陽光になるのではないか。自然だけれども、とても人工的な場所になるのかなと思っています。

太田:はい、いいです。

平沼:提案物の審査ですので発表の最後の思想的な話しは別にして、この提案は新しい発見を発表してくれている感じがして、とても好感を持っています。ただ、レンダリングしていた椅子の影や、太田先生が仰ったように、人の動きによって変わってくる影の落ち方が、上部の屋根ではまた全然違う様相を示していて、上の影響がどのように建築の空間や機能に落ちてくるのか全く見えないんです。上部にある屋根のガラスの枚数を、もうちょっと増やしたらどうなるのかと佐藤先生が言われている話であるとか、プレゼンの中の資料だけで見ていると、光の時間変化を均一化するという提案でもないので、屋根をガラスでつくりたいだけなのか、ガラスで建築の何がしたいのかが見えにくくなっている気がするんですね。実は、何がやりたかったのかという点を教えて欲しいんです。

増田:例えば都市であれば、窓の外の環境によって、室内の価値が変わってくると思います。だからまず、ただ建物として囲うのではなくて、先ほど言ったようにいかに外を引き込んだり、関係を設計していくかが、僕らは建物を作る以前に重要なことだと思っています。僕らが考えたことは、ガラスでいかに外を室内に引き込むか。設計によって、自然には作れない何かを、新しい自然のように作り出す。それが一番やりたかったことです。

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