司会:ありがとうございました。それではここで1次審査時の集計表とコメントを紹介させていただきます。1次審査は3組とも3票という同得票数でした。また、審査員の先生からのコメントは、実現をした時への期待を寄せるコメントを多くいただきました。
それではこれから公開審査を行いたいと思います。審査員の先生方よろしくお願いいたします。

太田:僕からよろしいでしょうか。ちょっと視点を変えた質問をしたいと思います。このコンペの最優秀作品は、京橋の交差点という一等地のかなり良いところに展示するわけですので、展示そのものが一種のエンターテイメントでなければいけないと思うんですね。それで、特に増田さん大坪さん、久保さんにお聞きしたいのですが、2組の計画は中に入って体験する空間ですよね?外から見ると、ブラックボックスかホワイトボックスかよくわからない。中も相当暗くしないとその微妙なニュアンスが伝わらないので、中でやっていることがわからない。それをどう考えているかということが1点。もう1点は米澤さんにも言えることなのですが、展示会場は夜も開いているので、夜はどのように対応するのか。あともう1つは、今回テーマがあって、技術面も発展させると問題が山積みになるでしょうが、作るプロセスも一つの展示だと思ったほうがいいと思っています。その点が今回この企画のとても面白いところだと思っていて、つまり必ずしも全部を作らなくてもよいわけで、途中までで展示するのもエンターテイメントになると思うんです。そのようなこともひっくるめて、どのような展示計画をするのかということを、3組にお聞きしたいと思います。久保さんからお願いします。

久保:1つ目に関してですが、トップライトの部分がいわばガラスの塊のように見えてくるため、通常の一枚のガラスがある状態とはだいぶ存在感が違うと思うので、それがひとつアイキャッチになるというか、存在感になるのかなと考えています。夜に関しては、展示スペースの上部にライティングレールが通っていたので、それを使って照明で中に光をいれて、光が分かれるように見せることができるかと考えています。プロセスについてですが、光が2つに分かれるという現象は、普段あまり見慣れない現象なので、それをガラスの厚みだったりプロポーションによってどうやって変化するのか色々な実験をしたいと思っていて、その過程をうまく展示できたらおもしろいかなと思います。

増田:実は、初めは壁がなくて屋根だけがあって、外に分けられて散っていく太陽の光を人間が包んでいくようなイメージを持っていました。なので、ガラスの成り立ち方はもちろんなのですが、壁をなくしいろいろな場所に光が落ちている状態で展示をしたいと思っています。あと、実際の環境でどのようになるかを検証するために、1回どこかに作品を置くということも考えたうえで、展示をしたいと思っています。

米澤:今回のコンペ案では、森の中を想定して提案していますが、この建築はショールームでも可能だと思っています。例えば、太陽光や人工照明を用いるなど多様なもので光の状態を作ることによって、ガラス1枚1枚に微分化されて、多様な光の状態ができるのではないかと考えています。1枚の大きなガラスではなく、小さなガラスを積み重ね、微分化するからこそ、反射や透過、屈折、映り込みといったガラス固有の魅力をわかりやすく宝石のようにきれいに、シンプルに伝えられないかなという思いで作りました。

平沼:こうやって3組の作品を並べると、明らかに米澤さんの作品はすごく展示の想像がつきやすいんです。昨年、最優秀賞を受賞して展示を行った加藤さん・ヴィクトリアさんのケースを想い出しながら質問をしたいと思っています。彼らの提案は、森の中に木々が自然に立ってあって、そこに領域をきめながらハンモックのようにガラスを設置するという提案に対して、この場所での展示では、まずどこに木を建てようかということから逆手でスタートさせたプロセスが、結構良かったのではないかと思っています。米澤さんにお聞きしたいのですが、ここの展示場所に対してどのようなプロセスでつくっていきたいと考えていますか?

米澤:プレゼンでご紹介をしました通り森の中をイメージして設計はしましたが、だからといって昨年の加藤さんのように、自然の木を持ってくるということは全く考えていません。加藤さんは構造が木々だったので、それでよかったかと思うのですが、今回の私のプランでは、逆にそうしてしまうと強引さが現れ限定的になってしまうような気がしてしまいます。今回かなりぼかしてプレゼンしたのもそこにあります。ガラス1枚1枚の性質をもう少し変えて、その環境の状況にあわせて設計ができるような、伸びしろを持たせられないか、ここだけでしか成立しないものが作れたらなと考えています。

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