平沼:うん。もうちょっとだけ、いじわるにつっこんで聞いてもいいですか? 結局、この米澤さんの案だと、展示場所という屋内用の小屋で展示をすることが想定できるので、面白く無いと思っています。わかりやすくいうと、みんなが想像できてしまうものを実験的だといって実現化しても仕方がないと思うんです。先ほど太田先生も言われた、ここで展示する仕組みをどのように整理するかによって、技術的な見解をどう見せていけるのかも重要なことだと思うのですね。そこの見解が聞きたいし、どういうプロセスをもって、具体的な実現化の考えが聞きたいと思っているのです。

米澤:確かに構造を検証しこのような提案をさせていただいたので、理論上ガラスだけで自立するとどのような状態になるのか、なんとなく想像がつきそうだというご指摘はわかります。ですが、この不思議な状態を自分でも見てみたいという思いがありまして。こうしたガラス1枚1枚が自立するということもそうなのですが、この1/50模型でやっているようなスケールでは絶対分かり得ないところで、スタディして実験していって自分でも1/1で実現したときの状態を、見てみたいという思いでやっております。

佐藤:やはり私は構造家の立場から安全性が非常に気になるので、受賞作品を選ぶにあたってもその点を考えたいと思っています。ガラスの構造を設計するときには、常にガラスが1枚割れたらどうなるかを考え、そのような意識を置かないといけません。米澤さんと、増田さん・大坪さんにお聞きしたいのですが、1枚割れると崩落する危険があるぐらいの構造に見えますが、今思いつく範囲でよいので、なにかフェールセーフを設けるとすると、どういうことが考えられますか?

増田:フェールセーフまで、まだ具体的に考えが行き着いていないのですが、単純に屋根に芯材を入れて、上面が支えられていれば、全部が落下することはないのかなと思っています。

佐藤:屋根の5 mmの板が割れるとどうなりますか?

増田:えっと…

佐藤:どのガラスが割れるのかわからないので、それを想定しないといけない。もしくは取り替えるという状況もあるんです。

増田:芯と横座屈のところに何か施せば、全体が崩れることはないかなと思っていて、十字にかんでいるところの芯と上部の辺に、2次材を使用する方法を考えるのが、1番早い対策かなと思っていますが、まだそこまでの考えにいたっていません。

佐藤:わかりました。先程どうしてガラスが4枚なのかという質問をしましたが、枚数増やすことで、何枚か割れても構造的に保つことが出来るという設計案もあるでしょうし、他にも何か考えられるだろうと思いますけれども、まずはわかりました。

米澤:表面張力を使用したシャボン玉のような構造と言いましたが、実際そのような状態をつくってしまうと、バンとシャボン玉のように割れてしまう、崩壊してしまう可能性が考えられます。実は、この案はあくまで鉛直方向にしか張力をきかせていません。ようはワイヤーが何本か通っているので、それが分散して板ガラスの壁柱のようになっていますので、1枚割れても大丈夫ではないかと考えています。

佐藤:例えば弱くなっている部分が割れてなくなり、正常な部分、健全な部分に寄りかかった場合、かなりの付加がかかるので、そのような注意事項はあるかと思いますが、そういう場合に面外に曲げられてしまうとか、水平荷重などのテストはしていますか?

米澤:テストはできていないので今後検証しなくてはいけないのですが、樽の構造のように、リング上に、水平方向にも上と下と真ん中くらいで張力を働かせようとは考えています。それが例えばやじろべえのようなものになるのか、その辺りも検討していかなければならないと考えております。

佐藤:はい。わかりました。

司会:ありがとうございました。それではここで一旦、審査員の先生方には控え室に入っていただき、審議をおこなっていただきたいと思います。また、提案者、会場の皆様には10分程度の休憩をとっていただければ幸いです。

※審査・審議中
(休憩)

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