佐藤:お二人の先生方と少し質問が被りますが、まずはガラスの奥行きです。構造上必要なデプスで背を決めたのはわかったのですが、それは構造だけで決まるのではなくて、太陽光をどのくらい透過させたいかによって決まってくると思うのですが、その点はどうお考えですか?

久保:そこは是非実験したいと思っているところです。光が2方向に分解される現象が、ガラスのデプスをどのくらいにするとどのようにかわるのか、その関係性がまだ分からないというのが現状です。色々試してみたところ、デプスがある程度あった方が、光が綺麗に2方向に分解されるということがわかったので、それをどの位まで縮めると分かれなくなるのかは、実際のサンプルを使ってもっと検証したいと思っています。

佐藤:15 mmという厚さも検証しないといけないところなのでしょうか。15 mmというのは何か根拠がありますか?

久保:なるべく分厚い方が、光が入りやすいので15 mmとしました。

佐藤:そうすると、できる限り厚いものを入手したい?

久保:そうですね、19 mmでもいいと思うのですが、施工の問題があって、今回恐らく大人数で施工、展示の計画は出来ないと思うので、15 mm位が作業しやすいかなと思いました。

佐藤:先程の模型のテストを見て、角度が2方向に分かれた光が入れ代わっていく様子なども非常に綺麗で、実際の状態を見てみたいと思いましたが、一方、我々構造屋さんからすると、これは相当な重さになると思うので、屋根の上にこれだけの重量をのせることに非常に抵抗があるのですが、どう思われますか?

久保:出来るだけガラスのデプスを縮めたいなとは思っているのですが、光を2方向に分解するために、どれだけ縮められるのかという葛藤があります。また構造的な面で言うと、今はガラスをかけ渡しているだけなのですが、ロッドのようなものを部分的に間に通す等して、デプスが小さくても構造的にもたせる方法を、もう少し検討したいと思っています。

佐藤:わかりました。

花澤:先生方とはまったく違う視点で質問をさせてください。温熱環境のことでお話しをきかせてもらいたいと思います。回折機能というのでしょうか。そのような形で光をコントロールするのはすごく発想に富んでいて、面白いと思って見ていました。ただ、夏場の外気温35℃のときの室内温度はどのくらいになってしまうのかな、という心配があります。その辺りは、何かシミュレーションをされていますか?

久保:温熱環境のシミュレーションはしていないのですが、通常のトップライトだと、直射光が1ヶ所に集まってしまって人がいられないくらい暑い場所が出来てしまいますが、光が分散されることで、ある程度はばらつきが出るのではないかと思います。あとは熱を上手く換気できるような仕組みを考えられるのではないかと考えています。この形状を使って、上部から熱を外に出すことも出来るかなと思っています。

花澤:ガラスを1枚ずつ三角状に縦にくっつけているのは、非常に面白いアイデアだなと思うのですが、光を曲げるのであれば、フィルムを使うことは考えなかったのですか? つまり、ガラス以外の他の素材との組み合わせを選択するようなことは考えなかったのでしょうか。

久保:そうですね。僕の知る限りでは、このように綺麗に2方向に分けられるフィルムはないと思います。ガラスそのものがもつ光学的特性を活かして、何か発想の転換を行うことで新しい光環境をつくるということに興味があります。

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