ガラスは透明性をもつ硬質素材という特質により、雨、風等、外気から人々を守り、光をもたらし、視界をクリアに広げることができる、現代建築には欠かせない存在となっています。閉ざしながら透明性をもつ未来的な空間には、人々に清々しさや感動を与える力があります。本展では、今後の活躍が期待される30歳以下の若手建築家による指名設計競技にて提案された、ガラスの新しい使い方を試みた建築の展示を行います。中でも最優秀案作品は、実際にガラスを用いて制作したモデルが展示されます。「多様な光のあるガラス建築」をテーマに、ガラスの特性を新たな視点から読み取った提案を期待することで、未来のガラス建築の可能性を示します。

大阪巡回展
 
会  期 2014年8月1日(金)〜8月30日(土)[合計 26日間]
開場時間 10:00~18:00 (日曜休)
会  場 ODPギャラリー
〒559-0034 大阪市住之江区南港北2-1-10
アジア太平洋トレードセンター(ATC)ITM棟10階 ODP(大阪デザイン振興プラザ)
入  場 無料

開催記念トークイベント 開催の様子
 
日 時 :  2014年08月01日(金)18:30〜20:00
会 場 :   大阪・南港ATC  ODPセミナールーム
 
ゲスト : 建築家・太田浩史 構造家・佐藤淳 建築家・平沼孝啓 (設計競技審査員)
出展者 :  U-30 出展者 岩瀬諒子(最優秀受賞者)
 
8月1日 金曜日。
大阪・巡回展の開催当日に開かれた開催記念トークイベントでは、昨年の秋に開催した、U-30「30歳以下の若手建築家による建築の展覧会」に出展された出展者による指名設計競技で最優秀者となり、大阪凱旋展覧会にて原寸モデルを設置された岩瀬さんをはじめ、この設計競技の審査をされた、太田先生、佐藤先生、平沼先生のご出席の下、ガラス建築の可能性を題材にした議論が交わされました。当日の様子を一部抜粋してご紹介させていただきます。
 


------東大のAGC寄付講座でガラスの研究を主にされている佐藤先生は、ガラスのどのような所が難しくも思い楽しく思われていますか。また東大で都市再生を専門で研究をされている太田先生がガラスで階段をつくられたのは、どのような魅力からガラスで階段をつくられようとしたのか教えてください。

佐藤:はい。ガラスは、わかっていても失敗するのですよね。ガラス同士が当たらないようにするために、緩衝剤をはさみ込まないといけない。あらゆる部分で金属との接触を避けないといけない。石上さんのヴェネチアでのガラス建築でもそうだけど、施工途中の現場でやはり何枚か割れました。挟むはずだったけれども、セッティングが甘くなり、現場での施工ではどうしても発生してしまう。その難しさと、常に割れる危険性を感じながら扱うっていうことをやっていると、だんだんわかるようになるというか、扱い方をだんだん知って、もっとガラスを自由に扱えていくのではないかと感じています。先ほど岩瀬さんの話しにあったように、例えばちょっとしたテストやスタディで使用する材を、扱い難いガラスでやらずに、ヤング係数の同じアルミ材を使うとか、接合するときのクランプで挟むにしても、どのくらいの厚さの樹脂で挟むといいのかとか、設置面の納まりでも、緩衝材とした床を設置するとか、ちょっとした代用の素材で実験することによって、培っていける技術が積み上げられているという風に感じてもらい、それをどんどん発展させてもらえればいいかなと思っています。そして活用しづらいガラス材をどんどん利用してほしいなぁと思うのです。今回の展示でも、半年の期間で成立させるというのは相当大変なことなので、的を得た検証で成立まで持っていく楽しさを感じてもらえたのではないかと思います。

太田:AGCスタジオで設計をしたガラスの階段でいうと、あれは揺れるから面白い。僕は揺れるのは魅力だと思っていて、吊り橋なんかにみんなが行くのは、人の重さであったり行動に対して揺れるからいくのです。そして、うまく揺れを操作できると、もっと良いと思っています。その動的な素材の表れみたいなものが設計対象に入ってくると、どのくらい変位があるかとか、揺れたときにどういう光になるかとか、きっとシュミレーションできるはずで、そこの揺れも一緒に制御できていくと、もっと面白くなるのだろうなぁと思っています。それから、今回はレオフレックスといってとても薄く、スマートフォンの表面に使うような大変薄いガラスの新素材を使っている。ずいぶん技術的には面白いテーマですが、限界もまだまだある。原寸展示にあったあれだけの大判が制作できるということは、とても重要なことですが、普通は熱で強化するガラスを薬品に浸けてガラスの両側に圧縮を与える。両側が力学的に変化して、それで強度が高くなる素材です。そうすると、強化してから穴を開けると応力が変わってしまうので小さな穴も開けられない。それが今の状態です。逆に、穴を開けてから強化すれば、またいろんな展開があるのかもしれないですけれども、利用に応じた工夫のようなものがだんだんテーマになってくる。穴を開けるのと同様に自由形状に切るのも、応力がかかってきてしまいますが、恐らく技術が進めば、好きな形に切って穴を開けそれから強化するっていうことができるというわけです。つまり、服をつくるみたいに曲げることを前提に、ガラスの構造物ができるかもしれない。その辺の可能性も研究しながら今回の岩瀬さんのアイディアを発展していくと、とても不思議な泡のような建築ができて面白いだろうと思います。今日のような場がそういうことを考え出す可能性をみつけるきっかけになるのだと思うのですが、素材と工法、設計法と製造法と、それら全てが同じまな板の上で調理されると食べたことのない新しい料理ができるような感じがしています。

------(会場)大阪大学で建築を学んでいます。本日は素晴らしいご講演をありがとうございました。先生方のお話しを聞かせていただいていると、ガラスという素材をとても愛されているなと思ったのですが、興味をもたれた理由やきっかけを教えてください。

太田:東大の内田先生も仰っていましたけど、外装材として一番性能が高く、一番丈夫なので、外壁の到達点だと思っています。かなり冷めた愛し方かもしれませんが、都市再生を専門に取り組んでいますので、ガラスを通した風景っていうものがひとつの現代的な、そして未来的なものをつくっていくことに興味をもっています。

平沼:透明性というものを追及していくことは、ある種、日本的なことだと僕は思っています。それは太田さんの言っているような透明なガラスを通じて見た近くの風景というものが、隣の家の屋根だったり、電柱だったり、樹木だったりをある種、抽象化した風景として見せてくれる。それはガラスが光を通す透明性の高い素材だからだと思っています。ガラスが光を通して、物質性を抽象化していくことにとても興味を持っています。興味をもったきっかけは、学生時代の課題で立面図を描かされる時に開口部の位置を描いていくとシンメトリーに配置していかなきゃいけないんだけど、描くとプロポーションとぶつかる。グラフィックデザインみたいな操作で立面図をつくっていくと立面を平面に置き換えたときや、その立面で決定した窓の配列だけで考えていくと、中の間仕切りにぶち当たったりしていて開口部のガラスの部分に変な間仕切りが出てきたりして駄目だ、なんてことになっていく。そんなことを永遠やっていると、内部空間のここに光を落としたいっていうのと、立面図に出てくる窓の位置、ガラスの位置がずれてくるものですから、いつかガラス造で作っていきたいみたいなことになっていまして、まずは窓という開口部の歴史を勉強していったのですね。いろいろ文献を調べていくと、町屋とか桂離宮にあるような開口部の障子文化にはまりこんでいくのです。結局、西洋の窓っていう文化は建築物があって穴をあける。僕が設計課題をやっていた時のように穴を開けるというようなバロックに代表するような窓の文化ですね。でも、日本っていうのは木造による在来工法の柱梁で囲われたところを障子で開口していくような、掃き出し窓の文化によって発達をしてきたのを知っていき、そこにガラスっていうのが障子に代わって付いていったことを知っていく。まっ、AGCさんが世界一のシェアを持つわけです。(笑) つまり大きなガラス面が存在する技術を求められていく訳です。僕はその時に、その回りに存在した柱や梁を取っ払い、構造を担うようなガラスになっていくような使い方ができる。そんなことができるのではないかと考えていくことからこの素材に期待をしたのかもしれません。

佐藤:先ほど少し話しましたけれども、こんな難しい材料はないっていうところですね。さっきお話ししたように脆性的な材料でもあるし、溶かそうと思えば1,200度くらいに加熱しないといけないわけで、素材をつくるための釜も相当な安全性をもって作らないといけないし、そういう難しい材料を扱えるようになりたい、という経緯で興味を持ちました。マッドサイエンティスト的な気持ちです。

岩瀬:私は光に対する扱いづらさが、今回の提案で一番感じたことです。ガラスってこう、感覚的には境界面として使われるので、外が明るいか、内が明るいかで全く表情が違ってきます。それって感覚的には分かるんですけど、今回のような、うねうねさせたガラスをやった時にちょっとその感覚が自分でとらえられないようなところに反射が出てきました。外の光が普段は暗いのに、サイネージが入り込んできて環境が変わったりしました。あと、東京展では自然光が半分だけ入ってくる室内環境で自分が置いたスポットと共存する形になったので、日中のあるタイミングでスポットが効くようになる。それまでは自然光が入ってくるけど、直接光が入ってこなくて間接光が入ってくるみたいな感じで非常に光の環境が変化をしたので、その時々で全然表情が違ったんですね。この時間帯は全くガラスが見えない。この時には人に見てもらいたくないなとか。うまく光が落ちない時があったり、それは私が逆に結構いいなと思った瞬間でもあるんですけど、人は一回しか来てくれないのにベストな状態を見せたいという気持ちもあったりして、そういう意味で本当に不思議で、よくわからないけど面白い部分に興味を持っています。


開催記念トークイベント
 

U30 Glass Architecture Competition (30歳以下の若手建築家によるガラス建築の設計競技)の設計競技の審査と経過から、審査員と最優秀賞受賞者と共にこれからのガラス建築の可能性を探ります。

日 時 2014年 8月 1日(金) 18:30 - 20:00
(18:00 開場 18:30 開始 20:00 終了)


岩瀬諒子(最優秀賞)

太田浩史(建築家) × 佐藤淳(構造家) × 平沼孝啓(建築家)

 

 
岩瀬諒子
太田浩史
東京大学生産技術研究所講師
佐藤淳
佐藤淳構造設計事務所主宰
平沼孝啓
平沼孝啓建築研究所主宰

 

AGC studio展
 
会   期 2014年3月7日(金)〜5月31日(土)[合計 58日間]
開 場 時 間 10:00~18:00 金曜日のみ 10:00~19:00(日曜、月曜、祝祭日 休館)
会   場 AGC studio(旭硝子株式会社) http://www.agcstudio.jp/
〒104-0031 東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館1・2階
東京メトロ銀座線「京橋」駅 4番出口すぐ
TEL:03-5524-5511 E-mail:agc-studio@agc.com
入   場 無料
 
開催記念対談イベント(第42回デザインフォーラム)

設計競技の2次審査に選出された3組による対談を行います。前半では、設計競技の提案についてのプレゼンテーションを行い、後半では建築史家の倉方俊輔氏がモデレーターとなって、今後の活躍が期待される若手建築家に、これからのガラス建築のあり方や可能性を伺います。

日   時 2014年 3月 7日(金) 17:00 - 21:00
(17:00 内覧会 18:00 トークイベント
 20:00 オープニングパーティ)
対   談

岩瀬諒子(最優秀賞)
小松一平(優秀賞)
杉山幸一郎(優秀賞)

モデレータ 倉方俊輔(建築史家)

岩瀬諒子
小松一平
杉山幸一郎

倉方俊輔(建築史家)
大阪市立大学大学院工学研究科准教授

開催記念トークイベント(第43回デザインフォーラム)


日本を代表し全国で活躍をする出展若手建築家のひとつ上の世代の建築家、構造家をゲストに迎え、これからのガラス建築のあり方や可能性を探ります。


日    時 2014年 4月 25日(金) 19:00 - 21:00
(18:00 開場 19:00 開始 21:00 終了)

ゲ ス ト 乾久美子(建築家)
モデレータ 太田浩史(建築家)
佐藤 淳 (構造家)
平沼孝啓(建築家)

乾久美子
乾久美子建築設計事務所主宰
太田浩史
東京大学生産技術研究所講師
佐藤淳
佐藤淳構造設計事務所主宰
平沼孝啓
平沼孝啓建築研究所主宰


   
このたび、アートアンドアーキテクトフェスタでは「ガラス建築」の提案を募る、30歳以下の建築家7組による指名設計競技を実施しました。
この設計競技では、今後の活躍が期待される30歳以下の若手建築家7組(U-30展出展者)から、ガラス素材の新しい使い方や表現の建築の提案を募りました。

10/13(木)に開催した最終審査では、1次審査通過作品となる上位3点の審査をプレゼンテーション形式でおこない、公開審査における議論を経て、最優秀賞が決定しました。

最優秀賞 岩瀬諒子
「おくじょうのくさむら」

1984年新潟県うまれ。京都大学工学部卒業。 EM2N Architects(スイス、チューリッヒ)勤務、同大学大学院修士課程修了ののち、隈研吾建築都市設計事務所に勤務。2013年、大阪府主催実施コンペ「木津川遊歩空間アイディアデザインコンペ」における最優秀賞受賞を機に、岩瀬諒子設計事務所を設立。建築空間からパブリックスペースまで、領域にとらわれない設計活動を行う。その他受賞に景観開花2007における佳作賞、協賛企業特別賞、東京建築コンサルタント賞。オルドス市主催教育施設国際設計競技における最優秀賞(EM2N)。現在、慶應義塾大学理工学部Darko Radovic研究室テクニカルアシスタント。




優秀賞 小松一平
「がらすのしずく」



優秀賞 杉山幸一郎
「風がきらめき、光がそよぐ建築」




30歳以下の若手建築家によるガラス建築の設計競技 公開審査

ガラスは、透明性をもつ硬質素材という特質により、温度や湿度、騒音などから人々を守る役割を果たしながら、内部空間に明るい光をもたらし、外部環境への視界をクリアに広げることができる、現代建築には欠かせない存在となっています。閉ざしながら透明性をもつ未来的な空間には、人々に清々しさや感動を与える力があります。この設計競技では、今後の活躍が期待される30歳以下の若手建築家から、ガラス素材の新しい使い方や表現の建築の提案を募ります。

U-30 Under 30 Architects Glass Architecture Competition 2013.10.11 (金) 18:00-20:00
© AAF アートアンドアーキテクトフェスタ
二次審査 (最終)

一次審査通過作品 上位3作品の審査を、プレゼンテーション形式で行います。
テーマ

多様な光のあるガラス建築
提案条件

構造はとくに限定しませんが、原則としてガラスの特性を新しく読み取った建築の提案を求めます。ガラスの新しい使い方、照明を含む光の効果的な活用、ガラスの必然性などをキーワードに提案を期待しています。また、できるだけ現在の技術で実現可能な建築物の提案としてください。
審査員

太田浩史
(建築家・デザイン・ヌーブ共同主宰・東京大学生産技術研究所講師)

佐藤淳
(構造家・佐藤淳構造設計事務所主宰・東京大学工学特任准教授)

平沼孝啓
(建築家・平沼孝啓建築研究所主宰・大阪大学非常勤講師)

相武弘明
(旭硝子株式会社ガラスカンパニー 日本・アジア事業本部ビルディング事業部長)
太田 浩史 (おおた・ひろし)
建築家 | 東京大学生産技術研究所講師
1968年東京生まれ。2000年デザイン・ヌーブ設立。2003-2008年に東京大学国際都市再生研究センター特任研究員、2009年より現職。
世界の都市再生事例を建築・公共空間の配置論から研究。編集企画・執筆に『SD1999 年5月号・挑発するマテリアリティ』、『INVISIBLE FLOW 省エネルギー建築ガイド』、『10+1 #31コンパクトシティ・スタディ』など。主な作品に「DUET」「久が原のゲストハウス」、映像作品に「PopulouSCAPE」。2002年より東京ピクニッククラブを共同主宰。
佐藤淳 (さとう・じゅん)
構造家 | 東京大学特任准教授
1970 年愛知県生まれ。00 年佐藤淳構造設計事務所設立。10 年より 東京大学特任准教授(AGC 寄付講座)。作品に「共愛学園前橋国際 大学4号館 KYOAI COMMONS」「プロソリサーチセンター」「武蔵野 美術大学美術館・図書館」「地域資源活用総合交流促進施設」 「ヴェネチアビエンナーレ2008」。著書に「佐藤淳構造設計事務所 のアイテム」。建築家との協働で、数々の現代建築を新たな設計理 念によって実現させてきた。

平沼孝啓 (ひらぬま・こうき)
建築家 | 平沼孝啓建築研究所主宰
1971年大阪府生まれ。AA School (ロンドン)ディプロマ在籍のため渡英後、99年にHs WorkShop-ASIA(現在・平沼孝啓建築研究所)設立。
代表作に分棟型のシングルハ ウス「時間の家」や、東京大学に設計した環境型建築「東京大学くうかん実験棟」などの作品がある。
日本建築士会連合会賞や、Innovative Architecture国際建築賞(イタリア)、Grand design国際 建築アワード(イギリス)など、国内外でも多数の賞を受賞している。
AGC studio
開催日時 2013.10.11(金) 18:00-20:00 
 
プログラム  
17:30-17:40 主催者より始めの挨拶、審査員ご紹介
17:40-18:55 発表者プレゼンテーション
(プレゼン10分 質疑12分 入替3分 / 1組)
18:55-19:00 休憩
19:00-19:30 公開審査
19:30-19:50 発表と講評 (審査員1人あたり約5分)
表彰式
19:50-20:00 主催者より終わりの挨拶
20:00-21:00 懇親会
 
参加方法 事前申込予約 (先着70名)
   
住  所 〒104-0031
東京都中央区京橋2-5-18
京橋創生館1・2階
電  話 03-5524-5511
●電車でのアクセス:
 銀座線京橋駅 4番出口すぐ
 JR東京駅八重洲南口より徒歩10分
 有楽町線銀座一丁目駅より徒歩4分
 都営浅草線宝町駅より徒歩3分
●車でのお越しの場合:
 AGC studioでは駐車場のご用意はございません。
 車でお越しの際には、周辺の有料駐車場等をご利用ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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